おばあちゃん、ステキな出会いに感激!

sobolog2005-06-04

赤城のつつじが見たいという、おばあちゃんのリクエストにこたえて、チチは山頂めざして一路、車を走らせる。目にしみるような新緑の中に咲くオレンジやピンクの花の群れに、おばあちゃんは大感激!

そこでチチは、もっとおばあちゃんを喜ばせようと考えたのか、帰りの道とは逆方向へ進路をとった。
「どこへ行くの?」
「老神温泉。」
「お・い・が・み・・・ずいぶん遠いんじゃないの?」
「大丈夫、すぐそこだから・・・」
しかしチチのすぐそこは、気の遠くなるほど遠かった。

「だめだ〜ゲロンパかも〜・・・」助手席のハハが悲鳴をあげる。
「あ、あたしもだめ〜キモチ悪い・・・」後部席のおばあちゃんは、ぐったりと身を横たえた。
「大体いつも強行なんだから、おばあちゃんの具合が悪くなったらどうするの!」
「そうだよ、あたしにだって、心の準備ってものがあるよ・・・」
嫁姑のブーイングの嵐の中、しかしチチは進路を変えようとはしなかった。

「もうすぐ、もうすぐだからさ・・・」


老神についた時には、もう夕方になっていた。
古い農家の入口に、「みつばち工房」の看板があった。
チチの知り合いのご夫婦は、長年の夢を実らせて、3年前にここに移り住み、天然ものの蜂蜜を作っているという。びっくりして出てきたお二人は、おばあちゃんを支えるようにして、ソファーに寝かせてくれた。

部屋の中には、さまざまな蜂蜜のビンがならび、静かな時間がゆっくりと流れてゆく。
やがて起き上がったおばあちゃんは、おいしい蜂蜜とお茶ですっかり元気を取り戻して、しばし料理談義に花を咲かせた。

「今度はゆっくり、温泉に入りにきてくださいね。」
緑の中に置かれた、妖精の家のような蜂の巣箱と、お二人の笑顔が、まなうらから消えなかった。

「・・・もう、ついにあたしもダメかなあと思ったけど、いい景色も見たし、おいしい蜂蜜も買ってもらったし、ゆ・る・し・ま・す。」

おばあちゃんの一言で、ようやくほっとしたチチであった。